今世界が注目する宮崎ワイン。2つのワイナリーを巡る、2泊3日旅-0

今世界が注目する宮崎ワイン。2つのワイナリーを巡る、2泊3日旅

\ 宮崎を旅するライターがお届けする旅行記事シリーズ /

フランスやイタリアといった欧米諸国と比べるとまだまだ歴史の浅い日本の国産ワイン。しかしながら、近年温暖化の影響もあり、その品質や豊かな味わいがひそかに世界から注目を集めています。
現在九州では、佐賀県を除く6県でワインが造られています。九州全体の日本ワインの生産量は1本(750ml)換算で約77万本。その半分以上の約47万本がなんと宮崎県、しかも県内産ブドウで醸造されています。

ここでは、宮崎を代表する2つのワイナリーを北から南へ巡る2泊3日の旅行プランをご紹介します。おすすめの周辺観光や宿泊先、宮崎産ワインとのマリアージュを楽しめるレストランなど、新たな宮崎の魅力に出会えるかも。

※本記事は2023年2月時点の情報です。

五ヶ瀬ワイナリー

熊本空港から約1時間半、高千穂峡からはわずか30分ほど。九州のほぼ中央に位置し、九州山地に抱かれた美しい夕日の里として知られる五ヶ瀬町。阿蘇五岳・阿蘇外輪山を望む眺望が素晴らしい、標高600mの丘の上に「五ヶ瀬ワイナリー」があります。
「地元で育まれた五ヶ瀬町産ブドウを100%使ったワインを作りたい」という願いのもと、2005年にワイナリーが完成。

ブドウ栽培に密接に関わってくるのが、土壌・気候・日照時間・降雨量。宮崎県に所在しながらも気候は冷涼で、冬の時期は雪が積もるほど。厳しくも豊かな自然と向き合いながら、地元栽培農家さんたちが懸命に育てたブドウ100%使用を実現。
この寒暖差の激しい気候と美しい水が、糖度と酸味のバランスが絶妙なブドウを育むのだとか。収穫したてのブドウから作られるワインはみずみずしさ溢れるフルーティーな仕上がりに。

五ヶ瀬ワイナリー敷地内には、ワインを購入できる「ワイン館」、地元の人が持ち寄った野菜を販売する「夕日の里 物産館」、五ヶ瀬ワインを堪能できるレストラン「雲の上のぶどう」があります。収穫シーズンには工場見学も。

ワイン館にて6種類ほど試飲しました。私のお気に入りは「緑 midori」でした。透明度の高いライトイエローの白ワインで、茶畑や新緑、そしてナイアガラを連想させるグリーンのボトルが印象的。マスカットらしい甘く華やかな香りとは裏腹に、柔らかな酸とスッキリ辛口でドライな味わい。サラダやローシーフードなど料理に合わせやすく、テーブルワインにピッタリ。

「日本ワインコンクール2018」や「Japan Wine Competition国産コンクール2014」、さらに直近では女性審査員のみによるインターナショナルコンペティション「さくらアワード2023」にて五ヶ瀬ワインが受賞。デラウェアはダブルゴールド賞、キャンベル・アーリーはゴールド賞に選ばれました。

■雲の上のぶどう

雲の上のぶどう

併設のレストラン「雲の上のぶどう」では、祖母山から九重連山、正面に阿蘇五岳、遠方には雲仙岳、眼下には茶畑といった阿蘇の雄大な景色を眺めながら、地元食材を使ったサラダやデザートなど、体にも心にもやさしい料理をビュッフェスタイルで楽しめます。もちろん、五ヶ瀬ワインもご提供しています。

高千穂旅館 神仙

せっかく五ヶ瀬エリアまで足を運んだなら日帰りではもったいない。足を止めてぜひ泊まりたい、とっておきの宿が「高千穂旅館 神仙」です。

五ヶ瀬ワイナリーから車で30分の好立地。一歩足を踏み入れるとそこには、高千穂の自然と神秘的な佇まいが融合した美しい日本庭園が広がります。50年以上続く歴史ある老舗旅館ですが、改装を繰り返しながら大切に継承されています。
全15室ある客室のうち、今回は「神呂木の庄(離れ) 万葉」に一泊しました。100平米を誇る敷地内には、天井高の開放的なリビング、檜の香り漂うツインベッドルーム、どこか懐かしさを感じる和室、内風呂に加えて露天風呂も。二人では持て余すほど。
枯山水を思わせる日本庭園を設えて、和洋折衷の風情溢れる造り。プライベートが守られていて、非日常でありながらも自宅のように寛げるようなゆとりある空間。一室一室趣が異なり、何度宿泊しても新たな発見があるとしてリピーターも多いとか。

夕食はワインとのマリアージュが楽しめる本格懐石料理。女将自身もワインソムリエ資格を持つほど厳選されたラインナップで、もちろん、宮崎県産のワインも楽しめます。生産方法にまでこだわったシャンパーニュやワインを提供。きめ細かな心くばりと、贅を尽くしたおもてなしの一つ一つに、身も心も癒されます。この日は、都農ワイナリーのキャンベル・アーリーのスパークリングで乾杯しました。

都農ワイナリー

尾鈴山の麓にある都農町と川南町。高千穂から車で約1時間半、宮崎空港からなら車で1時間ほどで辿り着く、海を望む丘の上に位置する「都農ワイナリー」。

戦後まもなく始まった都農のぶどう栽培。温暖な宮崎では雨や病害、台風に苦労するも、雨よけフィルムの設置や仕立て方、品種選定などで克服したことで産地が広がりました。
1996年、尾鈴ぶどう生産者たちの夢でもあったワイナリーが設立。今ではキャンベル・アーリーを中心に年間20万本を生産し、国内外のコンクールで受賞するワイナリーに成長しました。

日照量は全国でも随一の長さを誇る都農町。年間降雨量4,000ミリ以上で、世界のブドウ産地の5~8倍もの雨が降るだけでなく、収穫期には台風が襲来することも。ブドウ栽培やワイン生産には最も不適地と言われる中で、それを逆手に取って、石灰質を含む火山灰土壌が覆う複雑な地質を生かしながら、土作りや草生栽培など独自の技術で挑戦し続けました。

都農ワインは全体的に色が薄くて渋みが淡い、エレガントなライトボディ。筍の天ぷらや大根の煮付けなど、日本の食材の旨味を引き立てるような存在。チキン南蛮、地鶏のたたき、ポン酢などの宮崎グルメとも相性抜群。「ワインは地酒」という信念のもと、地元産ブドウを100%使用し、地元の風土を表現するワイン、地元の人々に愛されるワイナリーを目指しています。

ワイナリーツアーでは、取締役工場長の赤尾さんにお話を伺いながら、醸造過程の見学。ツアーの最後にはワインの試飲ができます。

7種類のワインのうち、私のイチオシは「プライベートリザーブ シラー」。
フランスでもオーストラリアのシラーでもない、“日本の都農のシラー”は新感覚。第一アロマはチョコレートやコーヒー、カシス系。のちに白胡椒や山椒、シナモン、ローズマリーのような複雑な香りに、タンニンと酸をバランスよく兼ね備えています。
毎年イギリスで開催される、インターナショナル・ワイン・チャレンジ2018(IWC:International Wine Challenge)にて銀賞と奨励賞を受賞。初挑戦の世界的規模のコンクールで2アイテム入賞という嬉しい結果に。キャンベル・アーリーを中心に国内外のコンテストで多数受賞、特にトロピカルフルーツのような華やかさを持つシャルドネのワインは、世界的にも非常に高い評価を得ています。

TSUNO WINE & BAKERY

ジャズが流れる店内やテラスからは日向灘が一望でき、ケヤキなど地元の木材を使ったカウンターが設置され、おしゃれで温かみのあるデザイン。
「ワインを楽しむパン」をコンセプトに作られる、地元の食材を活かしたパンの数々。
都農産の旬の食材が次々と、ここでしか味わえないオリジナルパンに生まれ変わります。
雄大な景色を見ながら、ワインとパンのマリアージュを楽しめます。

シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート

都農ワイナリーから車で1時間、宮崎空港から30分ほど。宮崎市の東岸、南北約11kmに渡って広がる雄大な黒松林に囲まれた「フェニックス・シーガイア・リゾート」。シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートをはじめとする3つの宿泊施設や、温泉、スパ、多彩なレストラン、そして名門ゴルフコースなどがあり、今の時期はプロアスリートが春季キャンプで利用することでも知られています。

今回はリゾートエリアの中心に位置する「シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート」に宿泊。全室オーシャンビューの客室からは、ゴルフ場のグリーンやどこまでも果てしなく続く青い海を一望できます。

■バンヤンツリースパ

タイ発のスパブランド「バンヤンツリー・スパ」は日本初上陸。天然由来のプロダクトを使用した様々なトリートメント。39階から眺める絶景の中、究極の癒しを体験。世界中同じメニューで展開しながらも、宮崎産緑茶や日向夏のオイルを取り入れるなどローカライズされたスパメニューが特徴。宿泊客に限らずビジター利用もOK。

■Ristorante ARCO

今年6周年を迎えた、落合務シェフ監修の「Ristorante ARCO」は、宮崎県産の食材を豊富に使った、ここでしか味わえないイタリアン。
ブルーを基調にしたスタイリッシュで開放的な非日常空間は、宿泊客にとどまらず、ゴルフ帰りやアニバーサリー使いする地元の人々も多いそう。

シェフおすすめフルコースは魚料理と肉料理を含む5品で構成され、奥日向サーモンやしまうら真鯛など、宮崎の食材をふんだんに使用した豊富な種類のパスタメニューの中から選べるプリフィックススタイルのコース。

進化する宮崎のワインツーリズム

生産量、品質、評価、人気において今急上昇中の宮崎ワイン。気候条件にハンデがあり、不適地とされる中でも、生産者や醸造家が試行錯誤を繰り返し、土壌改良や風土に適したブドウ品種の導入に積極的に取り組み、日々挑戦し続けていることが今に繋がっているのだと感じました。

こうしてワイナリーに足を運んで直接生産者からお話を伺ってみたり、滞在先のホテルやレストランで宮崎グルメとのマリアージュを楽しむことで、よりいっそうワインに愛着が湧き、宮崎のことをもっと好きになりました。

今回ご紹介した2つのワイナリーに加えて、南西端に位置し県内第2位の人口を擁する都城市や、日本有数の照葉樹林に囲まれた綾町など、宮崎県内には他にもワイナリーがいくつかあります。次回はどのようなコースでワイナリー巡りしようかとひそかな楽しみに。

今後も宮崎ワインの更なる進化に目が離せません!

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