自然の中で、のんびり自由なひとり旅 ~自然に囲まれ、人の温もりにふれる旅~
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コロナ禍以降、ますます注目されている「ひとり旅」。自分の興味やペースに合わせて自由に行動できるのがひとり旅の良い所ですよね。ただ、「ひとり旅をしてみたいけど、少し不安。」や「さみしくない?」と思う人もいるかもしれません。
そんな人でも大丈夫です!1泊2日の小林市と高原町を巡る旅は、初めてでも、女性でも楽しめるひとり旅。
宮崎の自然豊かな渓谷散策や雄大な自然の中でのカヤック、絵付け体験や農家民泊で人の温もりにも触れられる旅を、宮崎を愛する地元ライターがレポートします。
※本記事は2022年2月時点の情報です。
朝の澄んだ空気が美味しい。三之宮峡散策
小林市は宮崎の北西部、宮崎空港からは高速道路を使って約1時間の所にあります。三之宮峡は、小林の町中から車で20分ほどの場所にもかかわらず、秘境感たっぷりの渓谷です。
到着してすぐに神秘的な色の緑の川に魅了されました。両脇には高さ30mを超える屏風のように折り重なる「びょうぶ岩」がそびえ、迫力があります。
川沿いに続く遊歩道は、昔トロッコ道として使われていたもので、その時の名残か、時折トンネルが現れます。最初のトンネルは少し長いので入る時は怖かったですが、中に入ると明かりがつくので安心しました。その他のトンネルは短く、道は平坦でとても歩きやすかったです。
今回は、駐車場から片道約15分の場所にある河童の伝説が残る大きな岩のほら穴「カッパ洞」まで歩きました。朝のお散歩にはちょうど良いくらいの距離でした。気になった所で立ち止まって写真を撮ったり、川の流れをじっと見つめたり、自分のペースで散策できるのもひとり旅のいい所ですね。
小林駅周辺で地産地消のランチタイム
自然の景色を満喫した後は、小林の町中でランチタイムにしました。小林駅の周辺にはレストランやカフェ、お店が集まっていて便利です。その中でもおすすめのランチ場所をご紹介します。
大人の雰囲気でゆっくり食事を楽しみたい方はフレンチレストラン「Kokoya de kobayashi(ここやっど小林)」へ。古民家風の建物で中は落ち着いた雰囲気です。
野菜やお肉などの食材は、ほとんどが地元小林産の物を使用しています。ランチプレートは、野菜がふんだんに使われていて、目にも鮮やかでした。フランス料理だけれど、和のテイストも入り、お箸で食べられるというのも気を張らずに利用できて良かったです。カウンター席もあり、一人でも利用しやすい雰囲気です。
自然派、ヘルシー派志向の方は、オーガニックカフェ「イーヴィレッジ」がおすすめです。こちらは、レストランの他に、自然食品や有機野菜、フェアトレード雑貨なども販売しており、一人でも入りやすいお店です。
ランチメニューは、自家栽培を中心に、地元農家さんからの完全無農薬、無化学肥料の旬の野菜が中心のランチです。お肉は使われていないものの、品数も多く、味付けも多彩で野菜だけとは思えない満足感があります。心もお腹も満たされるランチでした。
キラキラ輝く良縁のみち 霧島岑神社
ランチの後は、小林の町中を離れ「小林しんわロード」と名付けられた道をたどり山の方へ。「小林しんわロード」には天孫降臨にゆかりがある小林の「神話」と豊かな森と対話するという「森話」の意味が込められているそうです。
最初に訪れたのは、「霧島岑神社(きりしまみねじんじゃ)」です。木々が生い茂る中に緩やかに続く石造りの階段が荘厳です。この神社は高千穂に降臨したといわれる天孫ニニギノミコトとその妻コノハナサクヤヒメなどをお祀りする神社です。
お参りをしたら、ぜひ、社殿の中にも入って拝殿奥にある「雲龍巻柱(うんりゅうまきばしら)」を見てみてください。外からは見えなかったのですが、近くで見ると両柱に巻き付く迫力ある龍と雲、象の彫刻が素晴らしく、一見の価値ありです!
太陽の光を受けてキラキラと光るハーバリウムの下を通るだけで幸せな気持ちになります。
夏の間は風鈴が飾られ、涼しげな音を奏でていましたよ。
森の中の工房で馬と戯れ 絵付け体験♪
ここは陶芸家川路庸山さんの工房・店舗で、お皿やカップに絵付けをして自分だけのオリジナル作品を作ることもできるのです。
好きなお皿やカップを選んだら、陶芸用の下絵具の使い方や注意点を教えてもらいます。デザインや色の相談など気さくに応じてくれる庸山さん。どんなデザインにするか悩んでしまいます。
※絵付け体験:2,500円~、所要時間:1時間半~2時間
デザインが決まったら、あとは自由に筆を走らせます。絵具もカラフルな色があり、お絵かきのように楽しめます。寒い時期は暖炉にも火が灯り山小屋にいるような気分でした。暖かい時期は外のテラス席で広々とした景色を眺めながら、馬たちと一緒に絵付けをするのも楽しそうです。
絵付けが終わった後は、ゆっくりお茶をのんだり、2頭の馬のポルカとジェーンにエサをあげたりする事もできます。深呼吸したくなるような気持ちの良い場所で、おしゃべりも楽しくついつい長居をしてしまいました。
収穫体験に五右衛門風呂体験!初めての体験がいっぱいの農家民泊
午後のゆっくりとした時間を過ごした後は、高原町にある古民家農家の「Sano Farm(さのファーム)」へ。今回の宿泊場所は、農業体験もできる農家民泊のお宿です。
縁側で猫達が日向ぼっこする、田舎のおばあちゃんの家を思い出させるようなかわいい古民家です。ゲスト用に設けられた入り口を入ると、中は綺麗にリフォームされていて、オシャレなカフェのようなお部屋でした。
※1泊朝食付:7,000円/人~
ナチュラルな白ベースの室内には、ゆったりとしたソファーやハンモックもあって、ゆっくり落ち着ける空間です。WiFiも使えて不便さも感じません。カウンターテーブルもあるので、リモートワークにも良さそうです。
夕食は、焚火で作るアウトドアディナー。オーナーのともみさんに教わりながら、野菜を切ったり、薪割りをしたり…。まるで、キャンプをしているようです。この日のメニューはポトフにパエリアでした。夜空の星を眺めながらの夕食の味はまた一段と格別です。
食べ物や飲み物の持ち込みもできるので、夕食時に小林ワイン「ん・ダモシタン」(この辺りの方言で「あらまぁ!」の意味)を飲んだり、焚き火で焼き芋や焼きマシュマロも楽しみました。ソロキャンプに憧れていたので、キャンプ気分も味わえて楽しかったです。
食事の後は、五右衛門風呂を初体験しました。五右衛門風呂は、鋳鉄製の風呂釜を下からたき火で沸かすお風呂で、底は熱いので、底板に乗って入ります。
初めての五右衛門風呂体験に、ドキドキワクワク。底板を沈めながら入るので、サーフィンをしているようなちょっとしたアトラクション気分でした。
五右衛門風呂で沸かしたお湯は、あがった後も体がぽかぽか。遠赤外線効果で体を芯から温めて、湯冷めしにくいのだそうです。おかげで朝までぐっすりと眠ることができました。
2日目の朝は農業体験から!
2日目の朝は農業体験からスタートです。まずはともみさんに教えてもらいながら鶏の餌をまきます。餌はおからや野菜を入れて発酵させた自家製のものだそうで、鶏たちへの愛情を感じます。
鶏小屋を開けると鶏たちは一目散に餌をめがけてまっしぐら。美味しそうに餌をつついていました。
次は朝食用の野菜の収穫です。畑にはレタスやラディッシュ、ハーブなど様々な野菜が育てられています。ともみさんが野菜やハーブの事、育て方も教えてくれました。身近な野菜でも、知らない事がたくさんあり勉強になります。朝に採る野菜は水分も豊富でシャキッとしているのだそうです。確かに葉がパリッとしています。
敷地の中には、柚や山みかん、梅や柿など様々な果樹もあって、季節毎に果物も楽しめるそうです。今回は柚を収穫してみました。高い所にある柚を採るのは一苦労です。柚がこんなに背が高くなるとは知りませんでした。
そして、ここでは養蜂もしているのです。養蜂箱を私は初めて見ました。忙しそうに巣を行ったり来たりしているニホンミツバチを見ていると、怖いと思っていた蜂もかわいく見えてきます。現在ではセイヨウミツバチが主流となり、二ホンミツバチは希少な存在なのだそうです。
野菜や果物だけでなく、鶏や蜂なども育てて、自然と共に生きる生活は憧れます。
朝食ができるのを待つ間にお散歩に出かけました。Sano farmを出ると、すぐ目の前には霧島連山の雄大な景色が広がります。思わず両手を広げて深呼吸。朝の空気が清々しく気持ちのいい光景です。
紅葉が始まった山々の姿を眺めながら向かったのは、狭野神社です。
狭野神社は、背の高い杉並木の参道が続く、立派な神社でした。高原町は初代天皇、神武天皇がお生まれになった場所と伝えられていて、第5代孝昭天皇の時に、神武天皇のご生誕の地に創建されたのが始まりとされています。
静かで小さな町ですが、初代天皇がお生まれになった場所と聞くと何か特別な空気を感じます。また、直線の参道では日本でいちばん長いと言われ、参道を歩くだけで心が落ち着きました。
さて、散歩から帰ったら、お待ちかねの朝食タイムです。
先ほど収穫した野菜はサラダに、ハーブはハーブティーとしてふんだんに使われています。カフェのような見た目のおしゃれさもさることながら、パンは自家製、ドレッシングには山みかんが使われ、ヨーグルトには柿ジャム、ハチミツも養蜂でとれたものと、ほとんどの物が目の前の畑でとれた物で手作りされています。究極の地産地消です。
近くでできた物をすぐにいただける幸せ。都会では考えられない贅沢な事です。「Sano Farm」には都市では味わえない田舎の豊かな暮らしがありました。
神武天皇が体をお清めになった霧島のおいしい水
様々な体験をさせてもらったSano Farmを後にして、次に訪れたのは「祓川湧水園(はらいがわゆうすいえん)」。
ここは、神武天皇がお生まれになった際に、身体を祓い清めたという伝説が残っています。
霧島からの湧き水は透明度も高く、澄んだ水が豊富に流れています。小さな公園のようになっていて、水がきれいな所に自生するというクレソンも見られました。
水汲み場もあり、遠方からもタンクを持って水を汲みに来る人たちも多くいるという、まろやかでおいしい水です。空のペットボトルやマイボトルなどがあればぜひ持って行って飲んでみてくださいね。
「祓川湧水園」から数十メートルのお店「そば庵 みやなが」。湧水園のおいしい湧き水を使用した蕎麦が人気のお店です。広い敷地の中には、日本庭園風のお庭があって、湧水園からひかれた水がとうとうと流れる池で泳ぐ錦鯉たちも見られました。水の豊かさがうかがえます。
古い民家を改装した店内は、田舎のおばあちゃんの家を思わせるような懐かしい作りでした。神棚やたんす、置物などが当時のままに残っていて、レストランである事を忘れてしまいそうです。
手打ちの蕎麦はコシがあってしっかりめ。湧き水を使っているからか、麺も艶々と輝いて美しいお蕎麦です。天ぷらもサクッと揚がっていて美味しいです。おばあちゃんの家でくつろいでいるようなほっこりした気分になりました。
奥霧島の景色を楽しみながらのカヤック
おいしい蕎麦でエネルギーチャージをしたので、午後はアクティブに動くことにしました。
向かったのは御池(みいけ)です。穏やかな御池とその後ろにそびえる高千穂連山が美しいです。岸辺にはボートやカヤックの乗り場があり、ここでは、足漕ぎボートの他、カヤックやSUPも楽しめます。
今回はカヤックに挑戦してみました。ライフジャケットを装着して、オールの漕ぎ方を教えてもらったらいざ出発!実際に湖に出て漕いでみると、見ていたよりもずっと大きく感じます。
静かな湖面に高千穂連山や木々、空の雲が反射してとてもきれいです。大きな自然に囲まれて、湖の真ん中に一人でいると、これ以上ない位の開放感と充実感に心が満たされます。
近くをゆっくり回って湖でぼーっとするのも良し、体力に自信があるなら湖岸の反対側、絶壁の上にある性空(しょうくう)上人の石像まで行ってみるのも良し。自分の行きたいところへ自由に行けるのがひとり旅の良さですね。
カヤックを漕ぐ時に結構濡れてしまったので、濡れても大丈夫な服か着替えを用意するといいかもしれません。
※カヤック:30分1,000円、SUP:30分1,000円、足漕ぎボート:30分1,500円
高原町の映えスポット!「高原町のトトロ」
田んぼの中に佇む大きなトトロ。今や高原町の人気スポットの一つになった「高原町のトトロ」。
実はここ、個人のお宅のお庭なんです。もともとは、お孫さんやお子さんのためにと古希の記念に作られた物だそうです。それが話題となり、現在では駐車場も完備され一般にも公開されています。
近くで見ても本当にそっくりです。携帯電話を置ける台も用意されているので、一人でも綺麗に撮ることができます。後ろには高千穂連山も写り、旅の良い思い出になると思いますよ。
※撮影時にはご注意ください。(一般家庭の庭なので大声を出して騒がないこと、夜間立入禁止)
プチプチ炭酸泉で旅の疲れもすっきり!
旅の締めくくりに、今回の旅の思い出を振り返りながら、ゆっくりと温泉につかってリフレッシュする事にしました。高原町には良い温泉があるのです。
こちらは風情ある温泉宿の建物が印象的な「湯之元温泉」です。
こちらの温泉は、温泉の中では珍しい「高濃度炭酸泉」で、炭酸ガスが溶け込んだお湯。入ると肌にプチプチと気泡がつきます。サイダーの中に入っているようで面白い体験です。
高濃度炭酸泉は冷泉で冷たいですが、露天風呂にはやや温かい中濃度温泉もあってそちらはゆっくりとつかることができました。温泉に入りながら地元のおばあちゃんとの話しに花が咲き、心までほっこり温まりました。
神経痛や筋肉痛、疲労回復に良いそうなので、旅の疲れを取るにはぴったりの温泉です。
※入泉料 大人:600円
こちらもおすすめの温泉「極楽温泉 匠の宿」。
こちらの温泉の内湯は大きな岩をくり抜いて作られたという一彫石風呂が見事です。レトロな雰囲気の浴室と石風呂に、鉄の香りがする濁り湯は情緒たっぷりです。こちらのお湯は鉄分を多く含む炭酸泉で、飲泉もあったので飲んでみると、微炭酸とほのかな鉄の味がしました。
外には、高炭酸泉もあって冷泉ですが、冷たいながらもじんわりと温かさを感じられる炭酸泉で、内湯と交互に入ると気持ち良かったです。露天風呂で、ゆっくり空を眺めながら今回の旅を振り返るのもいいですね。
※入泉料 大人:600円
1泊2日の小林・高原を巡るひとり旅。
興味のある所はじっくり時間をかけたり、疲れたら休んだり。誰に合わせる事もなく、自分の思うがまま、気ままに動けるのはひとり旅ならでは。絵付け体験やカヤックなどやりたい事にもすぐ挑戦でき、自由にのんびりできて良かったです。一人でも、農家民泊や温泉で地元の人たちと色んな話をすることができ、楽しい旅になりました。気ままなひとり旅にあなたも出かけてみませんか?