霧島錦江湾国立公園とは-0

霧島錦江湾国立公園とは

国立公園は、日本を代表する自然の風景地として、自然公園法に基づいて国が指定するものです。
北は北海道から南は沖縄、小笠原諸島まで34の国立公園が指定されており、年間3億人以上が利用しています。
国立公園内は、自然の絶景だけではなく、野生の動植物、歴史文化などの魅力の宝庫です。また、日本の国立公園は、森林、農地、集落など多様な環境が含まれていることが特長です。ほとんど手つかずの自然が残されているところがある一方で、自然と人の暮らしが織りなす地域の歴史や文化にふれることができます。
是非、実際に国立公園を訪れ、四季折々に変化する日本の美しい自然を満喫してください。

霧島錦江湾国立公園の特徴

巨大カルデラ群が育む雄大な自然と実りの海霧島山塊、錦江湾、桜島火山

霧島錦江湾国立公園は、我が国最初の国立公園の一つであり、昭和9(1934)年に霧島国立公園として誕生しました。本公園は、大きく北部と南部に区分され、それぞれ霧島地域、錦江湾地域として、特徴的な景観を有しています。
公園北部の霧島地域では、大小20以上の火山が連なり、火山活動に伴って誕生した火口湖、噴気現象、温泉及び高原などとともに、自然植生も多く残されています。霧島地域の主な利用拠点であるえびの高原、霧島温泉、高千穂河原、霧島神宮などには、多くの観光客が訪れます。
公園南部の錦江湾地域では、現在も噴煙を上げ地域のシンボルともなっている桜島を中心として、薩摩半島側には開聞岳や池田湖、知林ヶ島など、また大隅半島側には亜熱帯性植物が多く生育する佐多岬、エメラルドグリーンの滝壺が美しい雄川の滝、海域のサンゴ群集など、特色のある景観が広がっています。

霧島錦江湾国立公園の地形・地質・景観

本公園が位置する南九州は火山活動が活発な地域であり、現在も噴火を続ける火山や過去の大規模な噴火によって形成された巨大カルデラ(大量のマグマ噴出を伴う噴火により形成された陥没地形)が見られます。これらの火山活動は九州の東側の海底に沈み込むプレートの活動に起因しており、加久藤カルデラ、小林カルデラ、姶良カルデラ、阿多カルデラなどが、南北に並んでいます。また、過去の大規模な噴火に伴う降灰や火砕流を起源とした堆積物はシラス台地を成立させるなど、南九州の地形・地質に大きな影響を与えています。
霧島地域は、加久藤・小林カルデラの南部に位置し、最高峰の韓国岳(1,700m)、高千穂峰(1,574m)など、大小20以上の多様な火山が集中しており、火山地形の見本園とも言われます。新燃岳では平成23(2011)年に大規模な噴火を起こし、その後平成29(2017)年及び平成30(2018)年にも噴火するなど、現在も火山活動は活発です。
一方で、これらの火山活動によって生まれた火口湖、噴気現象、温泉が霧島地域の景観を特徴づけています。過去の噴火や標高差などにより多種多様な植生が成立しており、樹木の開花や紅葉、積雪といった季節変化が景観に彩りを添えています。また、韓国岳の山頂などからは、霧島地域の多様な火山だけでなく、錦江湾の方向に桜島や開聞岳など、列状に並ぶ火山を眺望することができます。

錦江湾地域は、姶良カルデラの南部にある桜島が世界的に有名な活火山であり、錦江湾南部には阿多カルデラが存在しています。桜島は、約100年前(1914年)の大規模噴火で流出した溶岩によって大隅半島と陸続きになるなど、幾多の噴火によって島の地形は大きく変貌を続けています。
また、奥錦江湾地区は、錦江湾やその背後にそびえる桜島と一体化した我が国随一の海域カルデラ景観を有しています。指宿周辺では複成火山である開聞岳や池田湖が、佐多岬周辺では阿多カルデラの辻岳断層崖や海食崖といった地形が、亜熱帯林などの植生や海没した火山地形などとも相まって特徴的な景観を形成しています。

霧島錦江湾国立公園の取組

ノカイドウの保護

えびの高原周辺では、世界で霧島地域だけに自生するノカイドウが見られます。しかし、高木による被圧、ニホンジカの剥皮害、根元の洗掘などのため、絶滅の危機に瀕しています(絶滅危惧IB類)。
そこで、行政機関、研究者、ボランティアなどが協力して防鹿柵や稚樹の保護筒の設置、被圧木の伐採、根元洗掘防止工事などを行い、種の保存を図っています。

パークボランティア

主に国立公園内で活動するボランティアの組織。自然観察会、清掃、野生動植物の保護管理などを行っています。

霧島錦江湾国立公園の生態系

本公園では、活発な火山活動、過去に繰り返されてきた気候変動、海面から山頂までの1,700mの標高差、世界で最も大きな海流の一つである暖流の黒潮、山岳部では年間4,000mmとも言われる豊富な降水量などによって、多種多様な植生が分布しています。高標高地域では火山活動の影響を受けた硫気荒原(硫気環境に適応した疎生の植生)やミヤマキリシマ群落などが成立しているほか、中標高地域ではブナなどの落葉広葉樹林、モミなどの温帯針葉樹林、シイやカシなどの照葉樹林、低標高地域ではアコウなどの亜熱帯樹林など変化に富み、それを基盤とする生態系が成立しています。
また溶岩の流出跡など、過去に噴火の影響を受けた場所では、噴出時代別に遷移段階が異なる植生が成立しており、生態系の変遷がみられる学術的にも貴重な場所となっています。
海域では、桜島や佐多岬周辺などで、石サンゴやトサカ類(海藻)など黒潮の影響を受けた色鮮やかな海中景観が広がっており、チョウチョウウオ、ソラスズメダイといった亜熱帯性の魚類が泳ぎまわる特色ある生態系を見ることができます。

霧島錦江湾国立公園の植物

霧島地域では、多種多様な植物が生育し、季節を通じて様々な花を観察することができます。早春にはフクジュソウ、マンサク、ハルリンドウなど、初夏にかけてヤマフジ、オオヤマレンゲ、コイワカガミなど、夏にはナツツバキ、イワタバコなど、秋にはオミナエシ、センブリなどが見られます。また、ミヤマキリシマ、キリシマミズキ、キリシマグミ、キリシマヒゴタイなど、「キリシマ」の名前を持つ植物も多数あります。
一方、錦江湾地域においても、キイレツチトリモチやシュロソウ、ソテツ、アコウや、佐多岬のギョボク、ビロウ、開聞岳山頂付近の雲霧帯のギボウシランやナツエビネなど、多様な植物が見られます。特に指宿地区では、ノハラクサフジやオオバショウマ、ヒゴスミレなどの北方系の種と、ソテツやグンバイヒルガオなどの南方系の種の双方を観察することができます。

霧島錦江湾国立公園の動物

霧島地域では、鳥類では非常に希少なヤイロチョウや特徴的な鳴き声を響かせるアカショウビン、昆虫類では分布南限のキリシマミドリシジミやウスイロオナガシジミなどが生息しています。特に高千穂峰の山麓に位置する国指定の「御池野鳥の森」では、オオコノハズクやサンコウチョウ、オシドリなど多くの野鳥を観察することができます。一方で、近年ニホンジカの生息数が増加しており、その強い摂食圧が植生全般に大きな影響を与えています。
錦江湾地域では、指宿地区の竹山沖の俣川洲にカツオドリやウミウが生息しているほか、南方系のツマベニチョウやタテハモドキなどの珍しい蝶類や迷蝶を見ることができます。また、指宿周辺の池沼などで希少種のベッコウトンボが見られる他、池田湖には体長が2mを超える熱帯性のオオウナギが生息しています。
一方、佐多地区などにはクロイワツクツクやケナガカミキリなどの昆虫類が生息しているほか、サシバやアカハラダカなど多くの渡り鳥が通過する中継地となっており、渡りの時期には多くのバードウォッチャーで賑わいます。

霧島錦江湾国立公園の文化・歴史

天孫降臨

霧島地域の高千穂峰は、天孫(天照大御神の孫である瓊瓊杵尊)が三種の神器をたずさえ降臨した地とされる霊峰です。頂上にある「天の逆鉾」は、神が降臨の際に突き立てたとされるもので、霧島東神社の社宝として祀られています。また、麓には霧島神宮やその古宮址などもあり、太古からの歴史が息づく神秘的な地域となっています。

温泉

本公園やその周辺には火山の恵みである温泉地が多く、古くから地域の人々や湯治客に親しまれています。霧島地域の温泉は、硫黄泉や炭酸水素塩泉など、泉質が豊富なことで知られており、また本公園外ですが錦江湾地域の指宿にある「砂むし温泉」は全国的にも有名です。

霧島錦江湾国立公園の利用上のマナー

・ゴミを捨てないでください
・花や植物を採らないでください
・野生動物に餌を与えないでください
・動物を獲らないでください
・歩行中禁煙
・たき火は指定の場所で行いましょう
・登山の際には、登山届を提出しましょう。
・事前に情報を集めましょう。本公園には、桜島や新燃岳など、活発に活動している火山があります。
 特に火山の活動状況について、事前に情報を集めましょう。火山の活動状況によっては、立入規制などがされている場合があります。

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